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海外ドラマ最新レポート Vol.651  「ベター・コール・ソウル」のパトリック・ファビアン、ハリウッドオーディションの仕組み明かす

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ベター・コール・ソウル」でソウル・グッドマン(ボブ・オデンカーク)らと法律事務所を共同経営するハワード・ハムリンを演じた、パトリック・ファビアン。主にゲストスターとして、「24 -TWENTY FOUR-」から「CSI:科学捜査班」まで数々の人気TVシリーズに出演しているベテラン俳優だ。
業界を知り尽くしたパトリックが、米エンタメサイトにて「ベター・コール・ソウル」にレギュラー出演が決まるまでのいきさつについて語っている。ハリウッドオーディションの仕組みの一端が分かる興味深いインタビューとなっている。
 
「ベター・コール・ソウル」出演は、意外なファミリー番組のオーディションがきっかけだった。その番組は米ディズニーチャンネルで放送されていた「ブログ犬 スタン」(2012~15年)。
「あの頃の僕は、しばらくの間、オーディションを受けていなかったんだ。でも役を取るのがだんだん厳しいと感じ始めていた。40歳を超えると演じられる役が限られてくるんだ」
そこに飛び込んできたのが、「ブログ犬 スタン」。犬が主役の番組のようで、気は進まなかった。それでも仕事は欲しい。加えてレギュラー出演している父親役と母親役の俳優が友人だったから、気楽にやれそうだと思えた。
 
いつものようにスーツを決め、オーディション会場に向かった。ドアを開けてビックリ、そこには20人以上の自分と同じような年齢、キャリアの俳優が順番を待っていた。
「エミー賞を取っている奴や自分の番組を持っていた奴らもいた。それで僕は自分がオーディションに呼んでもらえただけでラッキーなんだと分かった」
オーディションでは上手くやれたと思った。(役を取れそうだ)なんて野暮なことは言わない。スルリと逃げてしまうといけない。
「(エージェントに)電話があったらしい。僕(の写真)にピンを刺したそうだ。つまり僕はこの役には落ちてしまったが、それでもまだ興味を持たれているという意味だ」
 
何の連絡もないまま、5日間が過ぎた。マネージャーに連絡すると、その役にビッグネームをキャスティングしたらしいと教えてくれた。
「あのオーディション会場にいたのは皆25年以上のキャリアを持つ俳優たちだ。彼らよりもビッグネームを捕まえたってどういうことだ?」と改めて、役を掴むことの厳しさを実感した。
 
落ち込むこと3週間。「ブレイキング・バッド」のスピンオフとして始まる「ベター・コール・ソウル」のオーディションがあると連絡があった。
すっかり自信を無くしていたパトリックは、「『ブログ犬 スタン』でビッグネームをキャスティングできるんだから、『ベター・コール・ソウル』には映画スターが来るんじゃないのかい?」と少々ヘソを曲げていた。
それでも俳優の顔を作り直し、オーディション会場へ。キャスティングディレクターは「ブレイキング・バッド」「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」などを担当したシェリー・トーマスら。「ウォーキング・デッド」のオーディションも併せて行われ、パトリックはシェリーのiPhoneに向かって、ベストの演技を披露した。
「僕はいつも帰りの車の中で、もう一度オーディション演技をやり直してみるんだけど、やっぱり上手くできた気がした。上手くいけば『ウォーキング・デッド』にもゲスト出演させてもらえるかもしれないってね」
ゾンビ役は回ってこなかったが、もっと驚いたことがあった。「ベター・コール・ソウル」のクリエーター、ヴィンス・ギリガンから連絡があり、パトリックの演技を気に入ったというのだ。
 
もう一度、ギリガンを含めたプロデューサーたちの前でオーディションを受けることになった。その前に(製作の)ソニーでたくさんの書類にサインをしたという。レギュラーとしてのオーディションのため、決定する前にさまざまな取り決めが必要ということなのかもしれない。
「それから一週間半くらいで役が決まったと連絡があった。嬉しかったよ! この5週間が俳優としての現実だ。『ブログ犬 スタン』のゲスト出演はダメだったけれど、『ベター・コール・ソウル』のレギュラーに決まった。5週間の間に俳優として成長できたと思う」
 
現在、59歳のパトリック。幸いにも「ベター・コール・ソウル」の好演で仕事は途切れることがない。“5週間”を経験したおかげで、俳優としてのギアは一段上がっている。
「これからもできるだけオーディションは受けるつもりさ。オーディションがチャンスを広げてくれると分かったからね」
まるで新人俳優のようなやる気を吐露したパトリック。これからもさまざまな作品で見かける顔になるだろう。
 
 
<「hammontongazette.com」 2023年1月9日>