パキスタン人の両親の元、サウジアラビアに生まれたハムザは、9歳の時、カナダに移住した。当時から映画が大好きで、大きな影響を受けたという。
「よく映画を見ていました。僕は4人兄弟の末っ子で、いとこは21人もいるんです。その中でも僕はおちゃらけ者、好んでその役を演じていたのかは分かりませんが、一族のエンターテイナーでした」
結婚式では進んでダンスの輪に加わり、学校でも目立つ機会があれば手を挙げた。カナダのカールトン大学で映画を専攻したのは全く意外でなかった。
大学を卒業後、才気あふれるハムザは、カナダ国内で俳優として順調なキャリアを積んだ。そして、2020年からスタートした「トランスプラント 戦場から来た救命医」は米国でも放送され、今や日本を始め、世界各国でも見ることができる。
外科医役が当たり役となって世界の扉が開かれたわけだが、意外にもハムザは医療ドラマを見たことがなかったとか。
「『トランスプラント 戦場から来た救命医』に出るまで、興味がなかったのです。おそらく、僕の肌の色の人間は、医者になることが期待されていたからかもしれませんね」
どこの国の移民でも差別を経験しがちな第一世代は、第二世代となる我が子に権威のある仕事、つまり医者や弁護士になってほしいと望むもの。“おちゃらけ者”のハムザでさえ、両親からの無言の期待を感じていたのだろう。
無意識に医療ドラマを避けてきたものの、「トランスプラント 戦場から来た救命医」全4シーズンを駆け抜け、ハムザは数えきれないほどの医療シーンをこなした。そこらの新人研修医よりは余程手馴れて見えると密かに自負しているらしい。
「緊急事態には何かできるんじゃないかと思い込むこともありました。先日、飛行機に乗っていたら、(フライトアテンダントが)医者を探していました。応急処置はドラマで何度も演じたので、もう少しで進み出るところでした。勘違いも甚だしい!」
最後のコメントはハムザのリップサービス。“おちゃらけ者”精神は今も健在、生まれついてのエンターテイナーはこれから米国で、世界で、視聴者を楽しませてくれることだろう。
<「torontolife.com」 2022年8月17日>