犯罪サスペンスドラマの金字塔「LAW & ORDER」
陪審員制度にスポットを当てた新たなスピンオフ・シリーズ!
ディック・ウルフが生んだクライム・サスペンスの金字塔「LAW & ORDER」。スピンオフを次々と展開させたフランチャイズの元祖とも言える本シリーズにおいて、「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」「LAW & ORDER: クリミナル・インテント」に続き、3番目のスピンオフとして登場したのが「LAW & ORDER: 陪審評決」である。
2005年3月より米NBCにて放送された本作。冒頭で事件が起こり、刑事ドラマから検察と裁判のパートへと展開するのが「LAW & ORDER」の基本フォーマットであるのに対し、「LAW & ORDER: 陪審評決」では具体的に事件が描かれることはなく、各エピソードは被害者、容疑者の訴えや言い分などから始まり、裁判へと至る過程と評決が下る過程が主として描かれる。タイトルの通り陪審制に注目したシリーズであり、陪審員そのものが討議を重ねる様子も描かれるが、主に検察側が起訴に持ち込み裁判で闘うためには、どのような戦略を用いるのか、一方で弁護士側がどのような戦略を立てて実行していくのか、その準備や裏での駆け引きが、より具体的かつ詳細にわかる作りとなっている。これまで他のシリーズで描かれることのなかった裁判の舞台裏を描いているのが「LAW & ORDER: 陪審評決」なのだ。
メインキャストの検察側の女性コンビを演じるのは、人気コメディ「Cheers(原題)」で2度のエミー賞を受賞し、舞台では2度のトニー賞に輝く実力派ビービー・ニューワースと、「サード・ウォッチ」「ブルーブラッド ~NYPD家族の絆~」のエイミー・カーソン。判事や弁護士を含めて、全体的に女性キャラクターが多いのも本作の特徴だ。また、密接に接点を持つ「LAW & ORDER」シリーズにおいて、本作には刑事を退職して地方検事局捜査官になったブリスコーや地方検事ブランチ、地方次長検事マッコイら本家の主要キャラクターが登場する。おなじみのキャラクターの別の側面や、アメリカの刑事法体系を別の視点から観ることができる点でもファン必見のシリーズである。
「刑事法体系では、自供や司法取引、陪審裁判により、有罪が確定するまで被告人は無罪である。これはその裁判の物語だ」という一文から始まる本作。その言葉の通り、裁判の舞台裏では何が行われているのかを描く作りとなっている。そのため、まず事件が起きるところから始まる他の「LAW & ORDER」シリーズとは異なり、事件の捜査があらかた終了したところからドラマは描かれる。本家をベースにして言えば、検察側が主体となる後半部分でも弁護士との駆け引きや容疑者との司法取引、起訴に至る過程における大陪審などが描かれることはあるが、本作の場合はより密に、戦略的に「陪審員がどういう評決を下すか」を意識した双方の思惑が交錯するところが興味深い。また、他の弁護士ドラマ、法廷ドラマでも陪審員に偏見があるかどうかを審査するシーンや、陪審員を弁護士側が買収するなどといったシーンもあるが、現実的に人種や職業、人物背景など、どのような陪審員が評決に有利に働くかを分析・アドバイスを専門とする仕事も存在する。それほどまでに陪審員の存在は、裁判において大きな位置を占めているのだ。一方で、陪審員制度にも様々な課題があることも浮き彫りになる。システムは異なるが、一般市民による裁判員制度にいまだ課題の多い日本においても興味深いテーマである。
主人公カイバーの上司として登場するアーサー・ブランチ地方検事に加えて、地方次長検事マッコイも顔を出す本作。本家「LAW & ORDER」のファンにとって何よりも嬉しいのは、「LAW & ORDER シーズン14」でニューヨーク市警を退職しその後地方検事局捜査官となったレニー・ブリスコーが登場することだろう。演じるジェリー・オーバックは、残念ながら本作の撮影中に他界。病身をおして最後まで本シリーズにブリスコーとして出演し続けた彼の出演シーンは「LAW & ORDER」のファンにとっては見逃せないものがある。また、第11話は「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」(シーズン6第20話)とのクロスオーバー・エピソードとなっており、ベンソン&ステイブラー刑事が登場。両エピソードともに、映画や舞台、TVで活躍する「LAW & ORDER: LA」のアルフレッド・モリナとアンジェラ・ランズベリー(TV「ジェシカおばさんの事件簿」)という演技派の豪華顔合わせが実現している(モリナは「LAW & ORDER: LA」のリカルド・モラレスとは別の役で本作に出演)。その他、「LAW & ORDER」からはグリーン刑事(ジェシー・L・マーティン)、ヴァン・ビューレン警部補(S・エパサ・マーカーソン)、オリベット博士(キャロリン・マコーミック)などもゲスト出演している。
全米で人気を博したコメディ「Cheers(原題)」』でエミー賞を受賞し、ミュージカル女優として2度のトニー賞に輝くビービー・ニューワースと、「サード・ウォッチ」「ブルーブラッド ~NYPD家族の絆~」のエイミー・カーソン。海外ドラマファンにはおなじみの実力派が演じるカイバーとガフニーの、個性の違う女性コンビが番組を牽引することは、「LAW & ORDER」シリーズでは珍しい。本作は全般的に女性キャラクターの比率が高く、女性の視点も丁寧にドラマに生かすことを意図していると考えられる。判事役では「ボストン・リーガル」でもおなじみのキャンディス・バーゲンが存在感を発揮しているほか、カイバーを支えるアシスタントチームには映画『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャスティンが検事補役でゲスト出演。彼女たちが交わす会話や仕事ぶりからは、基本的には男社会である法曹界の問題点が浮き彫りになってくる。特に、弁護士や判事が男性のケースにおいては、女性に対する偏見や差別などが明確に読み取れるエピソードもあり、ガフニーら女性検事の法廷や法廷外での闘い方にはマッコイらとはまた違った苦労があるのだ。
第1話に弁護士役で登場するピーター・コヨーテ(TV「LAW & ORDER: クリミナル・インテント」「LAW & ORDER: LA」にも各々違う役で出演)のように、アナベラ・シオラ(写真:左上)、ロン・シルバー、また本家「LAW & ORDER」のレギュラー・キャラクターだったキャリー・ローウェル(写真:右上)など、本作を含めて複数の「LAW & ORDER」シリーズにゲスト出演している俳優は少なくない。また、「ブレイキング・バッド」のジャンカルロ・エスポジート(写真:右下)、「ザ・ホワイトハウス」「マッドメン」のエリザベス・モス、映画『アメリカン・ハッスル』のブラッドリー・クーパー、「ザ・ソプラノズ」のロレイン・ブラッコ(写真:左下)、「恋するラブ・リーガル」のブルック・エリオット、さらには全米の人気トーク番組ホストのラリー・キング本人など、大物スターや海外ドラマファンにはおなじみの面々が多数ゲスト出演しているのも見逃せない。
原題 | LAW & ORDER: 陪審評決 LAW & ORDER: TRIAL BY JURY |
---|---|
データ | 2005年~2006年/アメリカ/二カ国語&字幕/60分/全13話/HD作品 |
製作総指揮 | ディック・ウルフ(TV「LAW & ORDER」) |
出演 |
ビービー・ニューワース エイミー・カーソン フレッド・ダルトン・トンプソン カーク・アセヴェド |
あらすじ |
© 2005 Universal Network Television LLC. All Rights Reserved.