近年、ニューヨーク州で撮影が行われるTVドラマシリーズが増えている。「ブラックリスト」「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」などの他、「レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー」は5シーズンを過ごしたカリフォルニア州から、シーズン6でニューヨーク州に撮影を移した。
そんなニューヨーク州が人気の理由は、TVや映画など映像製作に対する同州の大胆な税金控除にあると、米紙が報じている。
とりわけ巨額の税金控除を手にしたのが、「ブラックリスト」。州の記録によれば、なんとシーズン1から3までの約3年間で6330万ドル(約70億円)の税金を控除をされたという。
この控除額は州内で撮影される費用の、実に3割から4割。一見、気前の良すぎる税金控除に思えるが、映像製作は経済への莫大な波及効果を期待できるのだ。
「ブラックリスト」は州内に1万人以上の雇用を生み出し、数百の小規模ビジネスを活性化したと言われる。その経済効果は1億8900万ドル(約209億円)にものぼると計算されている。
他にも「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」はシーズン2から5までの4シーズンで8100万ドル(約89億円)の控除を受けるなど、ニューヨーク州では年に合わせて4億2000万ドル(約464億円)もの税金控除を映像製作に認めている。
この税金控除プログラムにより、「ニューヨーク州の映画・TV産業は賑わいを見せています。2004年の施行以来、310億ドル(約3兆4000億円)の経済効果と160万人の雇用を生み出しました」と州担当者。計算上、州が1ドルの控除を行うごとに、1.15ドル分の利益が州にもたらされることになるという。
しかし、これだけ大規模な税金控除プログラムを行っているとなると、批判の声が上がるのもやむを得ない。保守系シンクタンクのE.J.マクマホン氏は「ニューヨーク州では、常識はずれな企業向け大放出がなされているのです」と厳しい声を上げている。
映像製作誘致に成功したニューヨーク州を見習い、ジョージア州とカリフォルニア州のように類似した税金控除プログラムを実施する州がある一方で、すでに廃止した州もある。フロリダ州やウィスコンシン州、ミシガン州だ。いずれも、大規模な税金控除に見合った利益を得られなかったのがその理由だという。
<「democratandchronicle.com」 2018年11月21日>