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海外ドラマ最新レポート Vol.308  「カジュアル」主演のミカエラ・ワトキンス、ハリウッドのオーディション秘話明かす

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大人の恋愛コメディ「カジュアル」に主演する女優ミカエラ・ワトキンス。「サタデー・ナイト・ライブ」(2008~09)にレギュラー出演していた頃から注目を集め、「New Girl 〜ダサかわ女子と三銃士」「エンライテンド」などTVを中心に脇役出演が続く売れっ子だ。キャリアも実力も十分なベテラン女優だが、今も仕事を手に入れるにはオーディションを勝ち抜かなければならない。
 
「却下とは古い付き合いなのよ」とジョーク混じりに語るミカエラ。オーディションに落ちても、次あるのみ。この挑戦は終わることはない、女優である限り。そしてどれだけ熱演して見せたとしても、必ずしもそれがプロデューサーたちの御眼鏡に叶うかは分からない。キャスティングにはいろいろな思惑が入り混じるのだ。
 
あるとき新進気鋭と噂される若手監督の新作映画のオーディションに呼ばれたミカエラ。現場で台詞を目にして(ハハーン、こんな感じ)と演技プランを頭に思い浮かべた。「これがどんな映画なのか考えた。だけど声のトーンを間違えてしまったの。お笑い番組に出る時みたいな声を作ってしまった。真逆もいいとこ。しばらくしてその素晴らしく美しい映画の予告編を見た時、これくらい自分でも出来たのにと思った。自爆だったわ」これでは役が取れなくても仕方ない。どんなに負け惜しみを言っても、しょせんミカエラは“適材”ではなかったのだ。
 
そして「カジュアル」。離婚したばかりの精神科医ヴァレリーがミカエラの役だ。オーディションのため最初に脚本を読んだとき、(自分と似ている)と感じたという。「他の誰かがこの役を演じるとしたら悔しいだろう」、そこまでミカエラははまりこんだが、ここはハリウッド。いくら自分が“適材”と信じたとて、覆ることなど日常茶飯事だ。
 
ヴァレリー役のオーディションの日。最初に会場に呼ばれたのはミカエラだった。ミカエラのオーディションの後で、製作総指揮のジェイソン・ライトマン(『JUNO/ジュノ』『マイレージ、マイライフ』監督)は、他のプロデューサーに「いいんじゃない?」といきなり合格サインを出した。彼女の演技を見て、やっとヴァレリーに息が吹き込まれたと感じたのだ。もちろん、ミカエラ自身は自分が最初だったとか、ライトマンに気に入られたとか、そんなポジティブな内輪話を知るわけもない。それどころか「却下と友達」のミカエラは、「ああ、また9000人くらいの女優があのオーディションを受けて、そのうちのイケてる220人くらいに、二度目の呼び出しがかかるんだろう」と、ハリウッドのオーディションあるあるを思い浮かべていたのだ。
 
実際ミカエラには何の連絡もなく時間は過ぎていた。それでもやはり縁があったのだ、偶然にミカエラはライトマンと再会する。ライトマンはその時こう言ったそうだ。「これは言われて嬉しい言葉か、困る言葉か分からないけれど、ヴァレリー役は君が最適だと思う」クセの強いヴァレリー役だけに、ライトマンは気を使ったのだろう。それくらいミカエラの第一印象はライトマンに強烈だったのである。
 
ライトマンのミカエラへのこだわりは、もっとビッグネームを主演に迎えたいと渋る米Hulu(米のオンライン配信サービス)を動かした。オリジナル配信作品として期待をかけた米Huluにとっては、ベテラン女優は“適材”かもしれないが“適所”とは思えなかったのである。しかしライトマンの粘り勝ち。ミカエラ主演の「カジュアル」はその後4シーズン続く、米Hulu最初のスマッシュ・ヒットのコメディ・シリーズとなった。
 
ライトマンは「こんなに才能あふれる愉快な女優なのに、まだ主演作が無かったんだってね。ちょっと信じられないよ」と笑う。オーディションを勝ち抜き、実力のみでヴァレリー役をつかんだミカエラ。ライトマンをこだわらせたミカエラの“適材”ぶりをぜひ「カジュアル」で確認してほしいものだ。
 
 
<「backstage.com」  2016年6月8日>