才能を惜しまれつつ、若くして亡くなったハリウッドスターの一人にヒース・レジャーがいる。デビッドにとって、28歳で死去したヒースは映画『恋のからさわぎ』(1999年)の共演者であり友人でもあった。今だから言えるが、ヒースの死はデビッドにとって他人事ではなかったという。
「僕は複雑な子ども時代を送りました。13歳の頃、街で声をかけられてオーディションを受けることになり、その気もなかったのに俳優になりました。その出来事がなければ、僕はもう死んでたでしょうね。かつて依存症でしたから」
ヒースの死は薬物に関連していると言われる。デビッドも何かにすがらないと生きていけない青年期を過ごしていた。「生きていることにそれほど関心はなかった」と生と死が隣り合わせのような日々を振り返る。
「演技が僕の今生きている理由です。子どもたちも大切ですが、演技があったおかげで長く生きていられるのです」
ヒースの死を知った時、理由は問うまでもなく分かっていた。薬物なのであろうと。
「ヒースに自殺願望があったわけではありません。彼はただ薬物の問題を抱えていただけなんです。僕も歳を取って、今ヒースが生きていたらどうなっていただろうと思うと胸が痛む。なぜ、僕らと一緒に生き延びていないのかって。当時よりずっと悲劇に思えます」
ヒースには幼い娘がいた。デビッドも2人の子どもの父親となった。だから一層、彼の死が苦しい。
「彼は薬物で死ぬかもしれない、なんて考えてもなかったでしょう。誰も考えません。だけど、僕はもっと心配してあげるべきだった、反対してあげるべきだった。あの頃の僕は、そんな忠告をするような、興ざめな奴に思われたくなかった」
自分にも起こりえたことと分かっているから、なおさら悔やむ。28歳でアカデミー賞助演男優賞まで受賞、偉大な俳優の道を歩んでいた友人が生きていたら、今どんな演技を見せていたか。
そしてもう一人、ブリタニー・マーフィもデビッドにとって忘れられない若き才能だった。32歳で亡くなったブリタニーも薬物の問題を抱えていたと言われる。共演の機会はなかったが、それでも共に10代前半からショービジネスに足を踏み入れた者として、彼女の魅力に気づいていた。
「僕は今の今までブリタニーほど生き生きとした人に出会ったことはありません。彼女はまさに生命を体全体で表現しているような人でした。その彼女が亡くなるなんて……。死は誰にとっても背中合わせなのです」
若き友人たちの死を振り返ったデビッド。彼らの死は今もデビッドの心のそばにある。
<「rogerebert.com」 3月27日>