しかし実際の歴史と異なり、かなりフィクショナルなのは映画「女王陛下のお気に入り」の脚本家のひとり、トニー・マクナマラ(シーズン2でもほとんどのエピソードの脚本に参加)ならでは。これは筆者の見立てだが、マクナマラは本物のエカチェリーナを面白おかしく“二次創作”したかのよう。たとえば現実は、シーズン1の終盤のようなクーデターが起きたのは彼女の20歳の誕生日だったが、本当は30歳を過ぎていたし、十日も経たずに亡くなったピョートル3世はシーズン2で生き続ける(引き続いてニコラス・ホルトが快演)。作り手たちは前シーズン以上に豊かな想像力を発揮し、陰謀と策略、そしてそれらに失敗した時の後始末に四苦八苦するエカチェリーナたちの人間味はアップしている。
そして俳優陣も引き続いて熱演。このシーズン2が全米で配信された昨年は、エカチェリーナ役のエル・ファニングが映画「I am Sam アイ・アム・サム」で天才子役と呼ばれてからちょうど20年。新作ドラマ「ザ・ガール・フロム・プレインヴィル(原題)」では恋人を自殺させた実在の女性ミシェル・カーターに扮し、女優魂はヒートアップ。前シーズンに続いて「ボヘミアン・ラプソディ」のグウィリム・リーも登場。さらにこの新シーズン、「ザ・クラウン」シーズン4で絶賛されたジリアン・アンダーソン(「X-ファイル」のスカリー役)、「ハリー・ポッター」シリーズでルシウス役を演じたジェイソン・アイザックスら、ゲスト俳優陣もより豪華に。
時期は未定だが製作が決まったシーズン3も楽しみだ。
【アメリカTVライター 池田敏 2022/4/28】
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